イングレス→ポケモンGOでぼくらに加わる、新しい「旅に出る理由」

この記事は、2015年12月12日の「Ingress Advent Calendar」に登録しています。

Ingressの世界的イベントとポケモンセンターメガトウキョー1周年に寄せて

IngressはiPhone版が公開された2014年7月から始めました。「Munemitsu」という名前は、「ひらがな4文字だから」という理由でドラゴンクエストなどのゲームで使っていたものです。陸奥宗光のファンなもので。

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レベル16に達してからは「もうレベルも上限だし、ほかのことに時間を使いたいと思います」などと言いながらも夜な夜なIngressをしていましたが、最近は少し隠居生活に慣れつつあります。

Ingress以外で時間を使いたい「ほかのこと」の1つがゲームの「ポケットモンスター」です。わが家では前から家族でポケモンを嗜んでいました。Ingressを始めてからポケモントレーナー業がおろそかになり、そろそろ厳選のやり方を思い出そう……などと思っていたときに「Pokémon GO」の発表があったのには本当に驚きましたし、狂喜しましたね。

今日(2015年12月12日)は沖縄ほか世界各地でIngressの大イベント「Abaddon」が行われますが、東京・池袋ではポケモンの公式ショップ「ポケモンセンターメガトウキョー」1周年の記念日でもあり、私は家族とポケモンセンターに行く予定です。昼過ぎにポケセン付近でひたすらリチャージしている人がいたら、こっそり見守ってください。

Niantic、ポケモン社、任天堂のトップがそろって発表を行い、期待を集めるポケモンGOですが、Ingressのプレイヤーに多いと思われる30~40代前後の人は、世代的にあまりポケモンに馴染みがないと思います。私も息子と一緒に始めた数年前がポケモン初体験でしたが、そんな機会がなければ「ポケモン? 今更やってもねぇ……」と思っていたかもしれません。

でも、ポケモンGOではIngressの経験をある面で引き継ぎ、また新しい形での出会いや発見の機会にできると思うんですよね。ここではIngressの2016年以降を展望する意味も込め、Ingressとポケモンのユーザー体験と、両者の組み合わせから生まれる新しいユーザー体験について、経験談やら期待やらを書いてみたいと思います。

「深夜にこっそりイングレス」で1年ほど

ちょうど1年前のIngressのイベント「Darsana」のときに、エージェントカード(Ingress公式のAgent Dossierカードのデザインを模したもの)を作ってもらいました。

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「ムネミツとその息子はポケモントレーナーとして知られている。しかし、彼の裏の職業——レジスタンス・エージェント——は秘密であり、息子にも知らされていない。彼はいつも息子が眠りについた深夜に活動しているのだ」てなことが適当な英語で書いてあります。実際、私のIngressのプレイスタイルはそんな感じでした。

レベル16になり、「証人」「Persepolis」と連発したイベントが終わり、夏を過ぎたあたりで、かなり意識的にIngressで遊ぶ時間を減らそうと思いました。理由はいろいろありますが、もっとも重大だったのは、Ingressのプレイ体験を家族と共有しにくいことです。

上記のカードにも登場してもらった息子は現在小学校の低学年ですが、これくらいの年代とIngressで遊ぶのは、なかなか難しいものがあります。Googleアカウントの年齢制限の問題もさることながら、さすがに専用のスマホを考える歳でもないし、十分に監視できる状態でなければ「スマホ歩き」等による事故も不安だし……、と。

また、息子はけっこう凝り性のようなので、たまに触らせるなど不完全燃焼感と感じられるような遊ばせ方はストレスになるだけだと考え、そもそもIngressの存在を知らせないようにしています。もっと大きければ一緒に遊べるかもしれないし、もっと小さければ、簡単にごまかして連れ歩けるのかもしれませんが。

Ingressには「ご近所ポータルの仁義なき奪い合い」という面があります。それが本質ではないぞという声は当然あるでしょうが、まったくないとは言えず、うちの妻には向かないと思っています。

よく「特定ポータルに執着する人」の話を聞きますが、その反対で、神経の細い人は必要以上に気を使って遠慮したり、相手の心理を深読みして気疲れしたりすると思うためです。過去のマルチプレイオンラインゲームでも似たようなことがあり、本人も自分でやりたいとは思わないようなので、私からは誘わずにいます。

世界と世代を超える共通言語「ポケモン」の力

子供は何かに興味を持てば、相手がそれを知っているかどうかなど考えずに話すものです。はじめは「アンパンマン」や「きかんしゃトーマス」あたりだったでしょうか、唐突に知らない固有名詞だらけの話が始まります。

こちらに予備知識のない話を聞かされるのは苦痛です。話を理解できなければ返事も的外れになるし、子供の情熱に応えられないことは、非常にもったいなくもあります。

なので、親子で体験を共有できるものは、できるだけしておきたいと考えています。トーマスのキャラもかなり覚えて見分けられるようになったし、「ゴーカイジャー」でリアルタイムでない戦隊モノも覚えたし、新幹線にもそこそこ詳しくなりました。いずれも今はすでに記憶が怪しいですが。

戦隊モノや仮面ライダーを経て息子の興味がアニメのポケモンに移ったころ、誕生日のプレゼントに当時の最新作「ポケットモンスター ブラック2・ホワイト2」を買い、一緒に始めました。

ポケモンはいつも2本セットで出るし、2本あった方が集めやすいらしいし……といった思惑もあって一緒に始めましたが、息子が対戦をしたがり、対戦について情報を調べ、試しているうちに、子供向けのゲームとは思えない奥深さにすっかり魅了されました。今では新作が出ると家族3人分を買いますが、どっちを2本買うかで毎度揉めます。

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ポケモンセンターにたびたび行くようになって、ファン層の厚さにも驚かされました。

ポケモンセンターの周辺で、ファン同士がポケモン談義をしたり対戦したりといったことが日常的に行われているのですが、初対面の小学生と大学生がアツく語り合える共通の話題など、なかなかないものです。しかも同じ「今」のコンテンツを共有しているだけでなく、ポケモンには2016年で20周年になるという歴史の厚みもあります。

一度、ポケモンセンターで息子と対戦の相手をしてくれた社会人のお兄さんと話したことがありました。いわく、中学生のころからポケモンで遊んでいて、今でもときどき友達とポケモンセンターに来る。対戦で使っているポケモンには、古いシリーズから新作が出るたびに移して、ずっと使い続けている個体もいる、とのこと。まさに「パートナー」のポケモンなんですね。

息子が大きなお兄さんから貴重なポケモンを交換してもらってきたことがあり、そこにはちょっとっした師弟関係のような感覚があるのではないかと思ったりもしました。

ポケモンセンターには外国人の観光客も多く、私はまれに道を聞かれる程度しかコミュニケーションの機会を持てていませんが、もっと語学が堪能ならばさらに楽しめるのだろうなあと、常々思っています。

ゲームは体験を共有し、語り合える「共通言語」の1つです。私がこの歳になってもゲームをするもっとも大きな理由は、それだと思っています。Ingressも、ポケモンも同様に。

Ingressが生み出したライフスタイルが引き継がれる

ジョン・ハンケ氏が、なかなか外出しようとしない息子さんを外に連れ出したいと考えたことがIngress開発のきっかけとなった、というエピソードは有名です。実際、近所の散歩から海外まで「人を連れ出すゲーム」として、Ingressは画期的なのだと思います。

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Ingressの効果として、プレイヤーの間では次のようなことがよく言われます。

・体を動かすことによるエクササイズ、ダイエットの効果
・出歩く中での発見
・人との出会い

ゲームというよりも、1つのライフスタイルを形成している感じですね。私も大いに同意するところで、まさにこれらの理由から、今後もIngressを何らかの形で続けたいと思っていました。

ところが嬉しいことに、おそらくIngressをベースにしたポケモンGOでも、上記のすべてと同様の体験はできるでしょう。「体を動かす」「発見」「出会い」は、今後も登場するかもしれないIngressをベースにしたNianticのプロダクト全部に共通する魅力となるのだと思います。

では、IngressとポケモンGOの違いは何になるでしょうか? 本質的な違いは、こうなると思います。Ingressはポータルや実際の土地(マインドユニット)を取り合うゼロサムゲームであり、エージェントは2つの陣営に別れて今のところ敵対関係を続けていいます。

対して、ポケモンGOではそうはならないでしょう。ポケモンの供給可能数に限りはなくプラスサムなゲームになるはずだし、ポケモントレーナーは陣営に別れて争い続けたりはしません。

もう少し細かいゲームシステムのレベルで見てみましょう。Ingressはレベル8で単純な攻撃力などの「強さ」は上限となり、覚えるべきテクニックやゲーム内のデータもさほど多くありません。あとは実際の地理にどれだけ詳しいか、仲間と連携して集団としての力を発揮できるか、といったところで勝負していくようになります。

ポケモンGOはちょっとタイプの違うゲームになると思います。ポケモンはゲーム内の情報量がかなり多く、ポケモンの能力やアイテム、技などの知識と、それを使いこなすノウハウが勝負に大きく影響します。ポケモン本編よりは簡略化されるかもしれませんが、情報量の勝負となる要素はポケモンGOでも濃く残るでしょう。他方、基本的には個人戦で、集団で活動することはあっても、Ingressにある集団対集団という要素は薄くなるのではないでしょうか。

Ingressで1年以上も敵対関係を(近所の方とは敵味方陣営ともある程度面識もあり、吞み会などを経験した方々も多いですが、ゲーム上では)続けて気疲れを感じる面もあります。同じエリアを歩き回っていて、両方の世界観を行ったり来たりできたら、なお楽しいのではないかと思います。

もちろん、これはIngressのポケモンのどっちがいいとか悪いとか、必ず家族全員でゲームをするべきだとか、そういう画一的な結論がある話ではありません。どちらも選べるようになることに意義があります。

ロールモデルはサトシ!?

Ingressでは「アイツがまたポータルを壊しに来た」的プレイヤー間の相互作用により、やるべきことや、継続するモチベーションが作られます。では、ポケモンGOではどんな仕掛けがプレイヤーを動かし、プレイヤーは何のために行動するようになるのでしょうか?

プレイのロールモデルとして、アニメ「ポケットモンスター」シリーズの主人公・サトシをイメージするのがいいように思います。

彼の行動原理は、きわめて明解です。

・目標はポケモンマスター
・ほかのポケモントレーナーと出会ったら、すかさずバトルを申し込む
・バトルの後は仲間(バトルしなくてもみんな仲間なんでしょうが)
・困った人がいればおせっかいなレベルで助ける、関わる

ポケモンのアニメは純粋に子供向けの作りで、私はたいした感慨もなく見ていましたが、サトシの刷り込みは思った以上に強烈なようです。幼稚園のころからポケモンを見ていた息子は、ポケモンのプレイヤーと会えばとりあえずバトル(対戦)をしたがったし、勝っても負けてもバトルを楽しんでいます。

アニメ初期のサトシはヒロインの自転車を壊して開き直る(!)など非道な面も見られましたが、最近はかなり(強引なストーリー作りがなくなった結果?)丸くなっている気がします。 Ingressには規範としてエージェントプロトコルが示されていますが、ポケモンGOは「サトシのように楽しもう」と考えると、非常にわかりやすいんじゃないかと思います。

私は「ポケモンマスター」の正確な定義を知りませんが、雰囲気では「ポケモンのジェダイ」的な感じ?

世界を救わなくてもいい

ポケモンGOは「任天堂のスマートフォン参入」における初期プロダクトとしても注目されるでしょうが、スマートフォンがどうというよりは、Ingressがそうであるように、リアルな(実際の)世界をプラットフォームに展開すると考えた方がいいでしょう。

リアルな世界と関連付けられたゲームは、共通言語としての文脈が豊かで、ゲームに入り込みやすいものです。一方、独自に作り込まれた閉じた世界を持つゲームは、いちど入り込めば面白いけれど、相対的に見て入り込むハードルは高くなります。ポケモンGOは両者の特徴がミックスされた世界観になりそうですが、これまでポケモンのプレイ経験がなかった人には、ハードルが高いと感じられるかもしれません。

「大人になってから初めてのポケモン」でハードルが上がる点として、最初から全体を意識してしまうことがあると思います。現在ポケモンは720種類いますが、この数字を聞いただけで、そんなに覚えられねーよ集めきれねーよとゲッソリする人もいるでしょう。

しかし、そこまで考える必要はありません。私が初めてポケモンの世界を体験して、すごいなと驚いたのは、主人公に提示される旅の目的でした。

ポケモンの主人公には、シリーズでおおむね共通した設定があります。母親と2人暮らしをしている主人公は、あるとき近所に住む博士(ポケモン研究者)からパートナーのポケモンをもらって、旅に出ます。

主人公を送り出すとき、母親はいつも「ポケモンと一緒にいろんなものを見て、いろんな人に会って、いろんな経験をしてきて」というようなことを言います。「ポケモンマスターを目指しなさい」などとは言いません。

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主人公はその後、博士からポケモン図鑑の完成を依頼されたり、悪のナントカ団の野望を砕いて世界を救ったり、ポケモンリーグに挑戦してチャンピオンになったりしてエンディングに至りますが、母親の期待は「親の庇護のもとを離れて知らない世界を旅すること」だけにあるのです。

こういった、決して高すぎない温度感で始まる冒険は、日常の中にちょっと新しい世界のレイヤーを重ねるIngressのシステムと、絶妙にマッチすると思います。最初から大きなことは考えなくてよく、ポケモンとの旅を楽しめばいいのです。

その先のディープな世界も果てしなく存在しますが、最初は気軽に。出会う人たちは、みんな味方です。

スマホ向けである以上、ポケモンGOのメインターゲットはある程度以上の大人になるでしょう。ですが、「完全新作では」と示唆されたニンテンドー3DSのポケモン本編との連携要素や、何らかの形で子供も遊べる仕掛けには期待したいところです。また、体験の共有のしかたは自分でも考えたいと思います。

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このサイトの管理人

小林 祐一郎@heartlogic
息子と一緒に始めた「ブラック2・ホワイト2」で初めてポケモンに触れる。対戦を少々嗜み、好きなポケモンはコジョンド。つらい思い出の多い技は「とびひざげり」。休日はポケモンセンター周辺によく出没します。

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