「ポケモンGO」の前に予習しておきたい「イングレス」のこと

(追記:Ingressプレイヤー向けの記事を書きました)
イングレス→ポケモンGOでぼくらに加わる、新しい「旅に出る理由」


2016年に登場予定の「Pokémon GO」はスマートフォン用で、位置情報ゲーム「Ingress」(イングレス)のNianticが開発する、これまでのポケモンとはぜんぜん違ったゲームになると予想されます。では、そのベースとなる(であろう)Ingressについて、知っておくとよさそうな現状の情報をまとめてみました。

スマホの位置情報を使った「歩く」ゲーム

Ingressは、Googleのマップチームのメンバーが中心となったNiantic Labs.が開発したゲームです。見慣れた地図が黒で表示され、プレイヤーは登録時に青(Resistance)か緑(Enlightened)のどちらかの陣営を選んで、地図を自分の色の陣地で染めるべく、実際に世界を歩き回りながら戦います。プレイは無料です。

この「戦い」そして「陣取り」がIngressの基本ではありますが、陣取りの拠点(「ポータル」と呼ぶ)を取るためにとにかく歩き回る必要があることから、「歩く」ゲーム、健康にいいゲームとして紹介されることが多くなっています。私も1年ちょっとIngressで歩き回っていますが、確かに健康促進の効果があると感じています。

「町おこし」の一環としても注目される

また、最近では自治体がIngressと提携して自分たちの街にプレイヤーを誘致する「町おこし」利用の動きも注目されています、ポータルを取り合うのではなく単なるチェックポイントとして巡り、スタンプラリーのように遊ぶ「ミッション」を中心としたイベントがしばしば開催されてます。

▼「町おこし」利用の例
STRATEGY BASE FOR INGRESS IN YOKOSUKA(神奈川県横須賀市)
岩手県 – 岩手県庁ゲームノミクス研究会(旧岩手県庁Ingress活用研究会)(岩手県)

必要なのはスマホだけ

Ingressをプレイするために、まず必要なものはiPhoneかAndroidスマートフォン。処理の速さがゲームにおいては重要なので、端末はできるだけ高性能でのモデルが望ましいですが、わりと古めの機種でも動きます。

とはいえ実際には、プレイは長時間外出しながらとなるため、モバイルバッテリーが必須です。データ通信や位置情報の取得を連続して行うためバッテリーの消費速度がけっこう上がるので、実際にある程度プレイしてバッテリーの消費具合を見ながら購入を検討するといいでしょう。パケットの消費も増えるので、通信プランの見直しが必要になる可能性もあります。

移動手段と「リアル課金」

そのほかで欲しくなってくるのが、移動手段です。Ingressは基本「歩く」ゲームとして紹介されますが、機動力を高めるためには自転車が欲しくなりますし、長距離の移動のためにバイクや自動車、または電車や飛行機を使うこともあります(極端な例では自家用機やヘリ、船を使って〜という話も)。

「Pokémon GO」がどのようなゲームになるかはまだ明らかになっていませんが、「移動」の重要性は変わらないと思います。自転車や車を直近に買い換える予定がある人は、Ingressをやってみて使用感を試してみる(ゲームの特性上、停止と発進を繰り返すことになるので、自転車ではそれに合った車種がいいとされるらしい)のもいいかもしれません。私は基本的には徒歩プレイヤーですが、たまに自転車(ただし子供送迎用ママチャリ)を使うこともあります。

Ingressそのものは無料のゲームですが、このように移動手段にお金がかかること、また、移動した先での食事や飲み物などにもお金がかかることを指して「リアル課金」と呼ぶことがあります。このほかにも、外を歩き回るゲームなので、冬は防寒着やスマホ操作が可能な手袋、夏は虫除けやスマホの過熱を抑える装備なども必要です。

「リアル課金」という言葉はもちろんジョークですが、やり過ぎるとリアル課金も洒落にならないレベルになることがあります。

プレイヤーコミュニティの成熟にしたがい、連携プレイが高度に

「陣取り」としてのIngressをある程度以上やり込もうとすると、プレイヤー間の連携・協力が不可欠となりますます。Ingressの歴史が長くなり、プレイヤーコミュニティが成熟していく中で、最近は遊びが高度化していく傾向にあります。

わかりやすいところでは「日本全体を囲っちゃった」とか。海外や離島のどこか3箇所のポータルを占拠し、3点をそれぞれ「リンク」で結び日本全体を囲むようにすると、日本全体を自陣営の陣地(「コントロールフィールド」または「フィールド」と呼ぶ—)にできます。当然ながら渡航費宿泊費等は自腹であり、複雑な世界のプレイヤーとの調整も必要になりますが、それをやり遂げてしまう人たちも存在します。

例えば、こちら:【作戦完了のご報告】 English version is latar. こんにちは。unitarocomです。 本日9月6日…

20151019-03-OpsMidgardPhotos-1
(上記記事より引用)

深まる遺恨と「廃人」化の問題

またマイナスの面として、リアル地図上のポータルを取り合うことから、敵味方で生活圏が重なり、お互いに意地になって戦うことで、大変な遺恨(ヘイト)が溜まることもあります。

ポータルをリンクしてフィールドを作ることにはいろいろなインパクトがあり、ゲームのマップ上で自宅が敵陣営色に染められても平常心でいるためにはいくらかの達観もしくは諦観が求められるでしょう。ポータルの取り合いでアツくなるのも仕方がないと思います。ただ、このゲームはアツくなりすぎると、いろいろと厄介な面が多いです。

Ingressのゲームシステムはある面で非常にシンプルで、スマホゲームによくある「行動力」的なパラメータが、ユーザー自身の体力や可処分時間そのものとなります。つまり、寝ないでやるほど、仕事や勉強をしないでやり込むほど、一般には強いのです。自分が相手を凌駕してやろうとしたら、そういう方向に行かざるを得ません。また、相手に対して「アイツはきっと私生活を犠牲にしてやっているのだろう、この廃人め!」といった具合にヘイトが積み上がっていく可能性もあります。

「勝ちたい」という気持ちがエスカレートした結果、リアルのトラブル、例えば交通事故やリアル揉み合い、さらには相手を「不審者」として警察に通報することによるリアル事案等にまで至ることもあるようです。Ingressの場合、ゲーム開始時に陣営を選ぶと、相手陣営の情報はほとんど入って来ず(ゲームの特性上、情報の秘匿は非常に重要になるため)、それも相手への猜疑心や憎悪が増幅しがちである原因となります。

おそらく「Pokémon GO」では、ポケモンの世界観が反映された結果、このような陣営間のバトルではなく個人戦が主となり、またバトル以外ではプレイヤー同士は協力しあえるようになると思います。そのため、こうした対立によるややこしさは、回避されるのではないかと予想しています。

ただ、「勝ちたい」「優位に立ちたい」という気持ちだけでプレイしても不幸な結果にしか至らないということは、とりあえず念頭に置いておきたいところです。

世界規模のイベントに関わるプレイヤーコミュニティ

プレイヤーコミュニティに関連してちょっと気になるのは、Ingressと同様に、世界規模でイベントが行われるだろうか、という点です。Ingressでは「XM Anomaly」という世界規模の対戦イベントが開催され、世界をまたいで(超ガチな)プレイヤーが移動することも通例となっています。こうしたイベントはプレイヤーコミュニティの地盤がある程度あるところに設定され、コミュニティとNianticが連携して準備が進められます。イベントにはほかにも、コミュニティにより大きな主導権が与えられる交流イベント「First Saturday」などもあります。

20151019-01-pokemon-ingress

もしも「Pokémon GO」でも同じようにイベントが運営されるとしたら、地元でプレイヤーコミュニティ(ポケモンジムのような?)を作ると面白いことになるかもしれません。とはいえ、運営者が何の利益も得られないコミュニティはサスティナブルではありません。何らかの形で利益が上げられる組織と組めたら面白いんじゃないかと思います。Ingressのように観光誘致が考えられるならば観光協会とか。

もっとも、プレイヤーではなく任天堂や株式会社ポケモンらが協力して、プロによる運営が主になるかもしれませんし、もっとまったく違う運営形態になるかもしれません。

意外と時間食いなゲーム

Ingressは、意外と時間を食うゲームです。テレビを見ながら、家で仕事をしながらでもポケモンの厳選やミラクル交換はできますが、Ingressはプレイのために外に出て歩き回らないといけないため、一切の「ながら」ができません。通勤通学等の移動ついでのプレイでもなければ、基本Ingressをメインに、ほかを「ながら」で(例えば徒歩中に音楽を聴くとか)やることになります。

20151019-02

都市部できちんとプレイしようとする場合には、サーバーが重くて1つのアクションにやたらと時間が取られたり、Ingressのために信号を1回見送ったり電車を1本見送ったりといった、微妙なロスタイムも発生しがちです。実際には信号や電車のためにプレイが中途半端になることも多く、時間のないときには結構なストレス源となる可能性もあります。

また、当たり前のことですが「今日は風邪で寝ていないといけないから1日中Pokémon GOをやろう」といった具合にはなりません。健康に活動できる時間を確保する必要があるという点でも、普通のゲームよりは時間確保のハードルが高いと言えます。

子供向けゲームになるのかはわからない

ポケモンシリーズは小学生ぐらいをメインターゲットとしたゲームですが、「Pokémon GO」がどうなるかは不明です。おそらく、スマートフォンを自分で維持できる経済力がある層、大学生から社会人ぐらいをターゲットとしたものになるのではないでしょうか。

それより下の年代はニンテンドー3DS版を遊び、スマホの「Pokémon GO」と何らかの形で連携できる、そこで大人の行動力や経済力を見せつけることができる、といった具合じゃないかなと個人的には予想しています。

仮にスマートフォンの維持費の問題がクリアされたとしても、安全性の問題があります。Ingressはスマホを持って実際に町を歩き回るゲームで、いい歳した大人がスマホ歩きして危ないとしばしば言われています。これをそのまま子供に遊ばせたら、確実に事故が起こるでしょう。ただ、安全が確保されたテーマパーク的な(サファリゾーン的な?)フィールドで、子供向けに提供される可能性はあると思います。

今からIngressを始めるならば?

Ingressは「勝ち」にこだりすぎた無理のあるプレイにならなければ、楽しいゲームです。外に出る機会が増え、ポータルになっている近所の寺社仏閣や公園、変なオブジェなどに詳しくなれたりもします。

IngressのポータルがPokémon GOにも反映されるのかは不明ですが、ふだんの行動範囲を歩いてIngress的土地勘を得ておくことは、なかなかに有意義なのではないかなと思います。

おすすめのプレイスタイルは、無理のない範囲で適当にやることです。エリアによっては一方の陣営のコミュニティが異様に強いこともありますが、それが敵でも味方でも、適当に流しましょう。それなりの歴史を経て結束してきた敵コミュニティに対抗するのは一筋縄ではいきませんし、味方だったとしても、そこに加わるのは必須ではありません。

ダークな話も書きましたが、プレイヤーのコミュニティに参加してみるのもいいと思います。大多数のプレイヤーは自分のペースでできる範囲で楽しんでいて、新人の参加は常に大歓迎です。みんながマイペース楽しんで、そのうえで自陣営が有利になるためには、人数が多い方がいいですからね。

「日本囲んじゃう?」みたいなビッグな企画に誘われることもあるかもしれません。それはそれで不思議な脳汁が出る貴重な体験になると思いますし、お金や時間が許すならば、試しに参加してみたらいいと思います。実際の土地を「自分の陣地」にできるのは、とにもかくにも快感です。

私が見ている範囲では、Ingressのプレイヤーとポケモンシリーズのプレイヤーは、あまり重なっていません。Ingressのボリュームゾーンは30〜40代から上ぐらいなのに対し、ポケモンのプレイヤーは上の方で30といった感じなので。あと、たぶん現在のIngressのコミュニティでアクティブに活動する人と、ポケモンを楽しむ人は、気質もちょっと違うかもしれません。

Ingressで知り合った人たちのうち、どれくらいがPokémon GOをやるのかもよくわかりませんが、ほとんどの人がNianticの大きな挑戦としての関心を持っています。「ポケモンはいろいろ難しそう」(覚えないといけない既存の情報が山ほどありそう)と思っている人が多い気がしますが、要は新しモノ好きなんじゃないかと思うので、既存の基本ルールのうえに新しいシステムを乗せてみせたら、けっこう飛びつくんじゃないかなあ。

▼Pokémon GO記事まとめ
Pokémon GOの攻略情報・プレイ記録まとめ

このサイトの管理人

小林 祐一郎@heartlogic
息子と一緒に始めた「ブラック2・ホワイト2」で初めてポケモンに触れる。対戦を少々嗜み、好きなポケモンはコジョンド。つらい思い出の多い技は「とびひざげり」。休日はポケモンセンター周辺によく出没します。

この記事をシェア

関連記事